ヘルペスウイルスのイメージ

ヘルペスという名前はたいていの人が知っていますが、性病の1つでもあるということをどれほどの人が知っているのでしょうか?

「口にヘルペスができちゃった」という話をよく聞きますが、今回ご紹介する性器ヘルペスは口にできるヘルペスと同じウイルスによって起こる性病です。

中には性器ヘルペスのことを知っている方もおられると思いますが、口にできるヘルペスと同じとは知らない方がほとんどでしょう。

ヘルペス自体あまりに身近なウイルスなので、ヘルペスウイルスに対する警戒心が薄くなっているのかもしれませんね。

この記事では、性器ヘルペスについて感染ルートや症状、治療法、そして口のヘルペスを始めとする他の単純ヘルペスとの違いについてくわしくまとめてあります。

性器ヘルペスのことを正確に知って不用意に感染を拡げてしまわないように注意しましょう。

細かいことはいいから、検査について知りたい方は→性器ヘルペスの検査方法、治療について知りたい方は→性器ヘルペスの治療方法へショートカットしてください。

目次

性器ヘルペスになったらどんな症状がでるの?

性器ヘルペスの原因ウイルスである単純ヘルペスは、感染した場所によってその呼び名が変わりますが、一貫して痛みの強い水疱潰瘍病変をつくります。

性器ヘルペスは当然、性器やその周辺に感染したものをいいます。

発症パターンや出やすい体の部位はウイルスの型によって多少の違いがありますので、そのあたりのことを詳しく説明します。

単純ヘルペスの発症部位一覧

単純ヘルペスの発症部位による病名と主なウイルス型をわかりやすく表と図にしてご紹介します。

 感染部位  病型  ウイルス型
 脳  ヘルペス脳炎 HSV-1(HSV-2の2倍)
耳・頭部 耳・頭部のヘルペス  HSV-1
 眼 角膜ヘルペス HSV-1
 唇 口唇ヘルペス  HSV-1
顔面 顔面ヘルペス ほぼ HSV-1
 指 ヘルペス性ひょう疸 HSV-1> HSV-2
 体・腕 躯幹・上肢のヘルペス  HSV-1> HSV-2
 性器 性器ヘルペス(初発) HSV-1> HSV-2
性器ヘルペス(再発)  HSV-1< HSV-2
お尻 臀部のヘルペス HSV-1≪ HSV-2
下肢のヘルペス HSV-1≪ HSV-2

単純ヘルペスの感染部位による病型

性器ヘルペスは無症状が非常に多い

性器ヘルペスは、感染しても症状をあらわさない無症状の人がとても多い性病です。

感染しても70~80%の人が発症せずにウイルスだけを排出する無症候キャリアになります。

ただし、これらのキャリアの人もストレスなどにより免疫力が低下した時に発症し(非初感染初発)、以後、再発を繰り返すようになります。

 

nicol説明

単純ヘルペス自体がありふれたウイルスなので、他の部位に感染して獲得した免疫が発症を抑えているのでしょう。

発症の時期によって初感染初発・非初感染初発・再発の3つのタイプがある

性器ヘルペスは感染してすぐ発症するパターン感染してタイムラグがあってから発症するパターン、そして以前に発症した経験のある人が再び発症するパターンの3つのタイプがあります。

はじめて発症することを初発といい、3つのタイプはそれぞれ、初感染初発非初感染初発再発と呼んで区別します。

それぞれに症状の強さが異なるのと、原因ウイルスのHSV-1とHSV-2とで傾向が異なります。

 

nicol説明

以前は、再発の患者数も算入していたのですが、2006年4月からは再発の症例は除外されて、初発の患者数のみになりました。
なのにグラフで見ても2006年(平成18年)以降も性器ヘルペスの患者数は横ばいでほとんど減っていません。再発患者のほうが多いのですから、実質、性器ヘルペスは増えているといえます。

性器ヘルペスでは性病によくあるおりものや尿道からの膿は目立たない

生理用品

単純ヘルペスで起こる病変は全般に、非常に痛い、あるいは痒いという特徴を持つ水疱潰瘍ができます。

重度の場合は発熱が出たりします。

性病というと、女性ならおりものが増えたり汚くなったり、男性な尿道から膿が出たり、というのが定番と思われています。

性器ヘルペスでは、このような性病の定番の症状は少ないのです。

もし、陰部にできものができても痛みがなかったり、おりものが多いなどの典型的な性病の症状が出ているのなら、他の性病の可能性や他の性病を併発している、あるいは細菌の二次感染などの可能性が高くなります。

女性の性器ヘルペスの初感染初発の症状

女性

性器ヘルペスの病変のあるパートナー、あるいは無症状でウイルスを排出しているパートナーとの性的接触後、2~10日間の潜伏期間を過ぎると突然、発症します。そのため初感染初発のことを急性型とも呼びます。

局所に1~2mmの水疱や水疱が破れて融合した強い痛みを持つ浅い潰瘍による症状のほか、ひどいと発熱など全身性の症状がでてきます。

発症後1週間くらいで症状がもっともひどくなります。

2~6週間で自然治癒しますが、抗ウイルス薬で治療すると1~2週間で治癒します。

以下のような局所の症状と他の部位の症状がでます。

局所の症状

  • 突然の強い性器の痛み(先にかゆみや不快感が出る場合がある)
  • 大陰唇、小陰唇、膣前庭、会陰部などに水疱や潰瘍ができます。病変は子宮頸管や膀胱にまで出ることもあります。
  • 強い痛みのために排尿困難や歩行困難になることもあります。
  • 鼠径リンパ節(股の付け根のリンパ節)が腫れて押すと痛みがあります。

その他の症状

  • 発熱
  • 倦怠感
  • 髄膜炎による強い頭痛
  • 末梢神経障害による排尿障害や便秘

女性では重症のため入院して点滴での治療が必要になることもあります。

女性の性器ヘルペスの非初感染初発の症状

初感染初発と同様の症状が出ますが、全般に症状が軽いことが多く、重症例は少ないです。

治りも初感染初発にくらべると早いことが多いようです。

女性の性器ヘルペスの再発の症状

再発時の症状はさらに軽く、多くの場合は性器やおしり、太ももに1~数個の水疱や潰瘍ができるだけで済みます。

割合は少ないですが、再発でも症状が重い人もいます。

再発の頻度は人によってさまざまで、年に1~2回と少ない人もいれば月に2~3回と頻繁に再発する人もいます。

男性の性器ヘルペスの初感染初発の症状

男性

ヘルペスウイルス感染者の相手とセックスやオーラルセックスをした2~10日後、突然のようにペニスに1~2mmの水疱があらわれます。のちに水疱が融合して痛みの強い潰瘍になります。

以下のような局所の症状と全身症状などその他の症状が出ます。

局所の症状

  • ペニス(亀頭、包皮、陰茎体部)に突然、かゆみや違和感をともなった水疱
  • 水疱が融合して強い痛みを持つ潰瘍
  • 尿道分泌物
  • 押すと痛い鼠径リンパ節の腫脹

その他の症状

  • 発熱
  • 倦怠感
  • 髄膜炎

全身症状などは女性と変わりませんが、全般に女性に比べて軽めです。

男性の性器ヘルペスの非初感染初発の症状

基本的に症状は初感染初発と変わりませんが、軽症ですむことが多く、治癒するまでの期間も短くなる傾向にあります。

男性の性器ヘルペスの再発の症状

再発は、初発と同じ場所やおしり、太ももに水疱や潰瘍の病変がでます。

初発に比べて症状は軽く、1週間くらいで治ってしまいます。

参考MSDマニュアル

HSV-1とHSV-2で症状の出方の違いがある

性器ヘルペスを起こす単純ヘルペスにはHSV-1とHSV-2の2つの型があります。

ウイルスの型によって発症しやすい体の部位があるのは、先に挙げた表で紹介したとおりです。基本的にHSV-1は上半身HSV-2は下半身に病変をつくります。

性器での発症に限ってみても、両者には症状の出方に違いがあります。

性器ヘルペスの初感染で検出されるのはHSV-1が7割近くを占めるとされています。しかし、HSV-1による性器ヘルペスは再発することがまれなのです。

つまり、再発例のほとんどはHSV-2による性器ヘルペスです。

どちらのウイルス型で起こった性器ヘルペスなのかを知ることで、以後の再発の有無を予想することができます。

産道感染して新生児ヘルペスになると赤ちゃんの死亡率20~30%

新生児

先述したように、性器ヘルペスは分娩時に赤ちゃんへ感染してしまう産道感染が起こりやすく、母体が初感染で生殖器に病変が出ている場合には、感染率は50%にも上ります。

生後28日までに発症したものを新生児ヘルペスとしていて、日本での発生率は14,000~20,000人に1人の割り合いで起こります。

 

nicol困り顔

性器ヘルペスは無症状でウイルス排出していることも多いので、十分注意しても発生をゼロにすることは難しいのです。全部、帝王切開にするわけにもいかないですからね。

新生児ヘルペスには次の3つの病型があります。

  • 全身型・・・多臓器不全が起こる。死亡するのはこの型
  • 中枢神経型・・・ヘルペス脳炎が起こる。
  • 表在型・・・皮膚や眼、ノドなどに局所病変ができる。

全身型は死亡するリスクが高く(死亡率20~30%)、中枢神経型は後遺症が残る可能性があり、どちらも重篤な症状といえるでしょう。

表在型はきちんと治療すれば問題なく治ることが多いですが、見逃して治療しなければ重症化してしまうかもしれません。

お母さんが性器ヘルペスを発症、あるいは疑いが強い場合は細心の注意が必要です。事前の母体に対する治療や帝王切開の選択を考えなければなりません。

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性器ヘルペスでHIVへの感染リスクが上昇

性器ヘルペス自体はやっかいな病気ではありますが、他の部位の単純ヘルペスも含めればウイルスを持っている人が国民の過半数という、言ってみればごくありふれた病気です。

しかし、特定の状況では十分に注意しないといけません。

1つは上に述べた出産時の母子感染。

もう1つがHIVへの感染です。

HIVは感染力は非常に弱いのですが、粘膜に傷や病変があれば一気に感染確率が上がってしまいます。

性器ヘルペスは皮膚や粘膜に潰瘍病変をつくる性病ですから、このことに当てはまります。

HIV感染リスクの問題は、クラミジアや淋病など他の性病でも同じなのですが、性器ヘルペスの場合は完治せずに再発を繰り返すことから、HIV感染により注意する必要があります。

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性器ヘルペスの感染経路は?何をしたら伝染るの?

病原体の単純ヘルペスは体のさまざまな部位に感染します。ここでは性器ヘルペスの感染経路を説明します。

性器ヘルペスはあらゆる性行為で感染します

いつ感染するかわからないクラミジアのイメージ

単純ヘルペスは体のあらゆる部分に感染する可能性があります。なので、性器への感染は体のどの部分からでも起こりうるということです。

つまり、通常のセックスだけでなく、膣性交以外のさまざまな性行為をしても感染の可能性があります。

  • 性器同士の接触
  • 膣性交
  • アナルセックス
  • オーラルセックス(フェラチオ)

これらの行為はすべて危ないということです。

「エッチ(膣性交)をしていないから性病になるはずがない」

というのは、性器ヘルペスでは通用しないので気をつけてください。

ただし感染ルートが性器とは限りません

前項と重複しますが、念のためもう一度書いておきます。

上の項目は性行為に限定していますが、最初に書いたようにヘルペスの病変があれば、手でも太ももでも、体のどの部分からでも性器への感染は起こる可能性があります。

口にヘルペスがあればフェラチオで感染したり、アナルにヘルペスがあればアナルセックスで感染するのと同様に、手にヘルペスがあって相手の性器を触ったり、太ももにヘルペスがあれば裸で抱きついただけで感染が成立するかもしれません。

なので、コンドームを使うことで感染の確率は減らすことはできますが、性器以外の部分にヘルペス病変があれば感染してしまいます。

再発が多く6~7割が再発による性器ヘルペス

性器ヘルペスの症状の出方は他の性病と違い、再発が非常に多いのが特徴的です。

性器ヘルペスを発症して病院にかかる人の大半、約6~7割の患者さんは、以前にも性器ヘルペスになったことのある、つまり再発による症例なのです。

なので、これらの再発による性器ヘルペスの患者さんには感染経路は存在しません。もちろん初回の発症時にはどこからか感染したことは間違いないですよ。

昔に感染した時のウイルスが残っていて、それが今になって出てくるのです。

再発はストレス疲労生理セックスなどが引き金になって起こるといわれています。

再発の頻度は人によって違い、年に1~2回の人もいれば、月に2回3回と頻繁に繰り返す人もいます。

 

nicol困り顔

では、なぜ?性器ヘルペスはこれほど再発しやすいのでしょう? 上の方でヘルペスに感染するとキャリアになると書きましたが、そもそも治療期間が不十分なのでしょうか?

一度感染すると生涯ヘルペスウイルスを持ち続ける

生涯続くイメージ

実は、単純ヘルペスに感染してしまうと一生完治することは望めないのです。

薬は効かないわけではないのですが、感染部位のヘルペスウイルスは神経をたどって奥へと進み、神経節という末梢神経の集まっている部分まで達します。

薬が届かない神経細胞の核の中でヘルペスウイルスは遺伝子の形で潜伏しつづけるのです。

性器ヘルペスの場合は主に腰仙髄神経節の中に潜んでいます。

そして体調不良などをきっかけに、潜んでいたウイルスが活性化して神経を下行していき、以前と同じ場所に再び症状をあらわします。

これがヘルペスウイルスに一度かかると何度でも再発を繰り返す理由です。

口唇ヘルペスや顔面ヘルペスが完治せずに何度も繰り返すのと同じように、性器ヘルペスも再発を繰り返すのです。

このように根治できないことが、性器ヘルペスがまん延してしまっている理由の1つでもあります。

性器ヘルペスが原因でアッシャーが離婚?!

アメリカのR&B歌手アッシャーが最近離婚をしたというニュースが流れました。

離婚の原因がなんと、性器ヘルペスをうつされたと2017年に愛人に訴訟を起こされたことが原因ではないかと言われています。

訴訟が離婚の原因だったのかどうかはともかく、ここまでヘルペスについて述べてきたことを読んでいただいていたら、性器ヘルペスをうつされたという証明はとても難しいことはお分かりだと思います。

もともと愛人がキャリアで、再発したり、体の別の部位から自家感染した可能性も十分ありますからね。

その後、次々と女性2人男性1人が「私もヘルペスをうつされた!」訴えが続いたそうです。

本当かどうかもわかりませんし、立証はむずかしいと思いますけどね。

もし濡れ衣で、それが離婚の原因になったとしたら気の毒なことです。

セレブは大変ですね。

母子感染に要注意!

妊婦にも多く見つかるクラミジア感染

性器ヘルペスでもっとも注意しないといけないのが、生まれてくる赤ちゃんへ感染してしまう母子感染です。

お腹の中にいる時に感染してしまう心配はありません(まれにしか起こりません)が、性器に病変があると出産の時に感染してしまいます(産道感染)。

もしお母さんが初感染で発症していたら50%の確率で赤ちゃんへ感染してしまいます。再発の場合は感染率は低くなり、0~5%とといわれています。

万が一、赤ちゃんへ感染して新生児ヘルペスになってしまうと、死亡率は20~30%にもなります。

なので、出産時に性器に病変が出ている場合は、帝王切開による出産が勧められます。

帝王切開を選択する目安としては

  • 分娩時に病変が性器にある or ある可能性が高い
  • 初感染初発(後述)から1ヶ月以内の分娩
  • 再発 or 非初感染初発から1週間以内の分娩

最終的な決断は担当のお医者さんの判断ですが、おおむねこのような目安で判断されます。

 

nicol説明

性器ヘルペスは適切に治療したり、後述する再発抑制療法を行うことでコントロールが可能な病気です。
適切にコントロールされていれば、自然分娩も可能です。

いつ感染した?性器ヘルペスの潜伏期間は?

 

潜伏期間

性器ヘルペスにもし感染したとしたら、心当たりのある性的な行為があってからどのくらいで発症するのでしょうか?

一般に、感染者である相手と性的行為があってから2~10日の潜伏期間を経て、性器に病変が出てきます。

ただし、この潜伏期間を過ぎたからといって安心はできません。性器ヘルペスでは後述するように無症状症例が非常に多いことと、初感染時に発症せずにタイムラグがあってから発症する非初感染初発という発症のしかたをすることがあります。

潜伏期間を超えて症状が出ていなくても、キャリアになってしまっていることは非常に多いのです。

 

性器ヘルペスの病原体・感染者数について

意外にヘルペスが性病としてメジャーな病気であることを知られていません。

性病としてのヘルペスの現状とその病原体について見てみましょう。

性器ヘルペスは女性に多く日本で2番めに多い性病、しかし実質は感染者が日本で1番多い性病

性感染症動向

性器ヘルペスは日本に十数種ある性病の中でも年間の発症患者の多い性病の1つで、平成26年まではずっと第3位の性病でした。一時は減少傾向にありましたがこの数年は増加に転じ、平成27年と平成28年には淋病を抜いて2番めに多い性病になりました。

性器ヘルペスは男女で発生率に差があるのが特徴で、女性の方が6割ほど患者数が多く発生します。平成28年でみてみると男性患者が3619人なのに対し、女性患者は5555人も報告されています。

この報告患者数は限られた1000ヶ所の医療機関での数なので、実際にはもっと多くの患者が出ているはずです。

おまけに、性器ヘルペスは感染するとウイルスをずっと持ち続けるキャリア状態になるので、感染者が亡くならない限り感染者数は減らないのです。

新しい患者が発生した分、全国の感染者は毎年増えていきます。

つまり感染者数は累積されるので、トータルの感染者数はクラミジアよりも遥かに多く、実質的に日本一多い性病といえます。

参考厚生労働省

原因は口唇ヘルペス顔面ヘルペスと同じ単純ヘルペスウイルス(HSV-1とHSV-2)

単純ヘルペスの電子顕微鏡写真
引用: 国立感染症研究所

性器ヘルペスの原因となる病原体は単純ヘルペスと呼ばれるウイルスです。単純ヘルペスはさらにHSV-1HSV-2という2つの型にわかれます。どちらも性器ヘルペスの原因となりますが、それぞれ異なる特徴を持っています。

これら2型のウイルスによって、性器やその周辺に病変をあらわしたものを性器ヘルペスといいます。

前述しましたが、このウイルスは性器ヘルペスの原因となるだけでなく、感染した部位によってさまざまなヘルペス症を起こします。有名な口や鼻の下にできる口唇ヘルペスや顔面ヘルペスがその代表で同じ単純ヘルペスで起こります。

同じ病原体で他の部位に出るヘルペスもあるので、ヘルペスに対する抗体を持っている人、すなわちヘルペスの感染者でキャリアになっている人は非常に多く、性器ヘルペス以外のヘルペスも含めると日本人の6割がヘルペスに感染していると言われています。

 

nicol説明

言い換えると、2人に1人以上の割り合いでヘルペスになっているということですから、もはや感染症とも言えないような気がしますね。しかし一方で、性器ヘルペスは性病として報告義務のある病気になっています。

精器ヘルペスではなく性器ヘルペスです

余談ですが、「性器ヘルペス」を検索してみるとよく、「精器ヘルペス」という書き方を目にします。当サイトへも「精器ヘルペス」というワードを使って来られている方は珍しくないようです。

でも、「精器ヘルペス」は完全な誤字です。正確には「性器ヘルペス」です。

 

性器ヘルペスの検査方法は?

登録衛生検査所のイメージ

性器ヘルペスの検査は、自分で調べる性病検査キットではkensa.bizの1社でしか扱っていません。

多くの場合は、病院で医師に診断してもらうことになるでしょう。

性器ヘルペスの疑いがある時は何科に行けばいいの?

基本的には女性なら婦人科・産婦人科・皮膚科・内科・性病科・感染症科、男性なら泌尿器科・皮膚科・内科・性病科・感染症科です。

しかし、症状の出ている場所で多少異なったりしますので、詳しくはこちらのページで確認してください。

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抗体検査は診断に使えない

単純ヘルペスに成人の6割が感染しているといわれ、それらの人は最初から抗体を持っているため、抗体検査は性器ヘルペスの診断には有用ではありません。

初感染の人では抗体が検出されるのが回復期なので、やはり診断には不向きです。

臨床症状と抗原検査で診断

診断には、あらわれている病変の視診と抗原検査、核酸増幅法などを組み合わせて行います。

最近は、病変をぬぐった液でインフルエンザのように即座に検査することができます。

ヘルペスの型で再発のリスクが予想できる

先に述べたように、ヘルペスウイルスの2つの型のうち、再発を起こすのは大半がHSV-2型です。

なので、検査でウイルス型を特定しておけば、将来の再発の可能性を予測することができます。

性器ヘルペスの治療方法は?

性病治療薬

何度もご紹介してきたように、性器ヘルペスは一度かかってしまうと一生治らない性病です。でも、根治ができないだけで、けっして治療ができないわけではありません。抗ウイルス薬を使用することで十分にコントロールできます。

治療は初発、再発、発症していない時、の3つの時期で方法が異なります。

初発に対する治療

アシクロビル

ゾビラックス錠   :200mg 1日5回 5日間服用

バラシクロビル塩酸塩

バルトレックス錠  :500mg 1日2回 5~10日間服用

ファムシクロビル

ファムビル錠    :250mg 1日3回 5~10日間服用

※重症例や脳炎・髄膜炎併発した例では注射用アシクロビルを点滴静注します。

再発に対する治療

アシクロビル

ゾビラックス錠   :200mg 1日5回 5日間服用

バラシクロビル塩酸塩

バルトレックス錠  :500mg 1日2回 5日間服用

ファムシクロビル

ファムビル錠    :250mg 1日3回 5日間服用

※再発から1日以内に服用しないと効果はありません。

※局所の違和感など前兆の時点で服用できれば、発症を防ぐことができる場合があります。

軽症では、アシクロビル軟膏を1日数回、5~10日間塗るだけのこともあります。

再発抑制療法

再発の頻度が多い人の場合は、抗ウイルス薬を継続的に服用して再発抑制を行います。

再発抑制療法を行う頻度の目安は年間6回以上の再発です。

バラシクロビル塩酸塩

バルトレックス錠  :500mg 1日1回 1年間継続

アシクロビル

ゾビラックス錠   :400mg 1日2回 1年間継続

※6~7割で再発がみられなくなります。

※投薬中に再発がみられたらさらに1年間継続します。

性器ヘルペスの感染予防はできるの?

梅毒について説明する女医最初に正直に言ってしまえば、性器ヘルペスを確実に予防することは難しいです。

これまでご紹介してきたように、病原体の単純ヘルペスは体のあらゆる場所に病変をつくります。性器や口からの感染に気をつけても他の部分から感染する可能性は常にあります。

数で言えば、性器ヘルペスと口唇ヘルペスがもっとも多いのですが、顔面のヘルペスや臀部のヘルペス、カポジ水痘様発疹症(ヘルペスが広範囲に拡大したもの)なども多く、これら3つを合わせれば性器ヘルペスを上回ります。

しかも、キャリア(感染者)は国民の半分以上もいるので、確実に防ぐなんてことは無理な話なのかもしれません。

コンドームで防ぎきれないけど使ったほうがいい

コンドーム

しかし、人と人が肌を重ねることは早々あるものではありません。性行為は肌を重ねるだけでなく、粘膜と粘膜の触れ合う行為(亀頭は粘膜)。

なので、性行為はヘルペス感染にとって重要な感染経路であることは間違いないのです。

不完全であっても、コンドームを使うことで感染リスクは下がります。

パートナーがキャリアで自分が非感染者であるのなら、子作りをする時以外はできるだけコンドームを使用しましょう。

もちろん、再発時にはセックスそのものを控えるようにしてください。

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発症していなければ感染率は低い

パートナーの片方がキャリアの場合にコンドームの使用が推奨されています。

しかし、性器ヘルペスに感染していない相手も、別の部位のヘルペスにかかっていて抗体を持っていることも多いので、コンドームなしでも実際の感染率はそれほど高くありません。

特定のパートナー間での感染率は1年経過した時点でも10%ほどです。

もし、相手がヘルペスに感染したことがなくて、抗体を持っていない場合は感染率は30%に増えます。

パートナー同士感染者なら予防の必要はない?

これだけ感染者の多い性病なので、パートナー同士がキャリアということも珍しくないでしょう。その場合には予防の必要はないのでしょうか?

お互いに発症していない時期なら、排出されるウイルスも少ないので、特に予防対策をする必要はないでしょう。

ただ、再発して性器に病変が出ている場合はウイルス量が多いので、感染者の相手でも再発の引き金になってしまうかもしれません。

コンドームを使うか、セックスを控えるようにしましょう。

 

nicol説明

現実問題、病変が出ている時は潰瘍の痛みが強いので、とてもセックスする気にならないかもしれないですね。

性器ヘルペスの再発予防

治療法で述べた再発抑制療法は、保険適用されるのは年間6回以上再発がある患者に対してバラシクロビル塩酸塩を投与する場合です。

年間6回より少ない人は、日頃からストレス解消や体調不良などに対して早めに対処して、再発を起こさないように自分でケアする必要があります。

再発の兆候を見逃さずに、できるだけ早く抗ウイルス薬を服用するというのも発症をおさえるのに効果的です。

まとめ

性器ヘルペスは完治しない性病で、性質自体はやっかいなものです。

しかし、病原体はごくありふれたものなので、もしあなたが性器ヘルペスになってしまったとしても、それほど負い目に感じる必要はありません。

多くの人が持っているので、風邪と同じように誰からうつったとか、誰にうつしたとか詮索することはあまり意味がないことなのです。

また、やっかいといっても治療薬で症状をコントロールすることは難しくありませんので、悲観的に考える必要もありません。

最低限の予防を行って、普通に性生活を送ることができます。