伝染性軟属腫と聞いてもほとんどの方は聞き慣れない病名だと思いますが、珍しい病気ではなく、幼い子どもがかかる水イボと聞けば知っている方も多いのではないでしょうか。
ウイルスによってイボができる病気で、天然痘と同じポックスウイルスの一種に感染することで発症します。
従来は、成人がなる伝染性軟属腫は子どもからの感染がほとんどと考えられていましたが、成人例では性器に多発することや、エイズ患者に好発することから性病としてとらえられるようになってきました。
DNAレベルでは4型に分類され、子どもの水イボ、エイズ患者、大人の性器伝染性軟属腫で型が異なります。
日本性感染症学会の分類でも、17種ある性病のうちの1つとして挙げられています。
性器伝染性軟属腫の感染経路と潜伏期間
性器伝染性軟属腫の感染経路
伝染性軟属腫の感染ルートには大きく分けて、
- 感染者と性行為によって患部に触れることによる直接感染
- 感染者の使用したタオルやバススポンジを介した間接感染
の2つのルートがあります。
肌と肌が触れ合うことで感染するので、コンドームによる感染予防効果は期待できません。
感染を広げないために、肌が触れ合うことを避け、患者の使用した衣類などは熱湯消毒することが推奨されています。
性器伝染性軟属腫の潜伏期間
感染後2週~6ヶ月で発症すると推定されますが、不顕性感染の感染者も多いと考えられていて正確には判明していません。
性器伝染性軟属腫の症状
粟粒大から小豆大のイボが形成されます。中央がくぼんだドーム状のイボで光沢があり、圧迫すると乳白色のドロッとした物質が出てきます。
この物質が感染源となるので、自家感染して周囲に新たな病変を増やしていきます。
病変は外陰部や恥丘などの陰部を中心に、肛門や太ももの内側などに多発します。
エイズ患者では性器周辺よりも顔面や首に多発し、巨大化しやすい傾向にあります。
性器伝染性軟属腫の治療方法
もともとは自然治癒する病気なので治療は不要なのですが、治癒するまでに数ヶ月から数年かかるため、パートナーや他の人への感染を防ぐために治療が行われます。
治療方法としては一般に
- ピンセットで1つ1つつまみ取る
- 薬物焼灼(硝酸銀、グルタラール、フェノール、水酸化カリウムなどを使い腐食させる)
が行われます。他に抗ウイルス薬(シドフォビア)が有効であったという報告もあります。
乾燥肌の人に起こりやすく、ワセリンを塗るだけでも治ることがあります。
大きく腫瘍化してしまっている場合は、外科的に切除したり、レーザーや凍結療法で除去する必要があります。
エイズ患者やアトピー患者がかかると難治性になることが知られています。
また、一度かかっても免疫は得られないので再感染もしばしば起こります。
性器伝染性軟属腫の検査方法
特徴的な症状から診断することが可能です。
判断できない場合は、組織検査を行う時もあります。
ELISAなどの抗体検査は感度が低く(77%)、現在のところ性病検査キットでは取り扱っていません。
性器伝染性軟属腫はHIV感染者の4~18%にみられるというデータがありますので、心当たりのある方は一度HIV検査を受けてみることをおすすめします。
参考:MSDマニュアル知りたい性病をチェック!
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